パオラ・べザーナ

1935年生まれ(2021年没)。
多様な社会的・文化的文脈から発展した高度な「織り」の技術の可能性に魅せられ、「織り」の3次元性を探究したテキスタイル作品を制作したアーティストである。時として巨大なスケールに達したそのテキスタイル彫刻は、民衆文化と現代的な抽象美術とをひと続きの線上に位置付けている。また、自作の制作と並行して、織物工房であると同時に研究・生産・教育センターでもある「Studio di Tessitura Paola Besana(ストゥディオ・ディ・テッシトゥーラ・パオラ・べザーナ)」を30年以上にわたって主宰し、スタッフのパオラ・ボンファンテ、ララ・ランツァとともに、産業用テキスタイルや建築、舞台芸術、ファッションのためのテキスタイルのデザインに取り組んだ。また、従来は技術の表現として一般的であったパターン論ではなく、技術理論に基づいた新たな教育手法も開発した。教育・研究活動と並行して、織り製品や織りサンプル、伝統的な織物やテキスタイルのライブラリーなどからなる膨大なコレクションも収集・管理した。そのコレクションは現在、「パオラ・べザーナ・アーカイブズ」で見ることができる。

Paola Besana/パオラ・べザーナ
ビアンカ・ボンディ

1986年、ヨハネスブルグ(南アフリカ)生まれ。パリ在住。
領域横断的な活動を実践するアーティストで、主に塩水を使った化学反応により、ありふれた物体を活性化あるいは崇高化する。ボンディが作品の素材とする物体は、予想される変化や、その物体が本来備えている固有性や象徴性などを基準として選定されている。視覚を超えた体験を創出し、相互の連関、はかなさ、生と死のサイクルといった概念に焦点を当てながら、「物質の生命」に目を向けさせようとするのがボンディの試みである。生態学やオカルト科学に情熱的ともいえる関心を寄せ、そのふたつを融合させることで多分野横断的で可変的な作品を生み出す。ボンディの作品では物体の「アウラ」が重要な役割を果たしている。置かれる場所と作品とが強い結びつきを示す、サイトスペシフィックで詩的な作品も多く手掛けている。

Bianca Bondi/ビアンカ・ボンディ

Photo: Laurent Lecat

AKI INOMATA

1983年、東京都生まれ。東京在住。
多摩美術大学 非常勤講師 / 武蔵野美術大学 非常勤講師 / デジタルハリウッド大学大学院特任准教授 / 早稲田大学嘱託研究員。2008年東京藝術大学大学院 先端芸術表現専攻 修了。
生きものとの関わりから生まれるもの、あるいはその関係性を提示している。主な作品に、「やどかりに『やど』をわたしてみる」(2009-制作中)、「犬の毛を私がまとい、私の髪を犬がまとう」(2014)など。主な個展に、十和田市現代美術館(2019年、青森)、北九州市立美術館(2019年、福岡)、ナント美術館(2018年、フランス)。国際展・グループ展に、「あいち2022」(2022年、名古屋)、「Broken Nature」ニューヨーク近代美術館(2021年、米国)、第22回ミラノ・トリエンナーレ(2019年、トリエンナーレデザイン美術館、イタリア)、タイ・ビエンナーレ2018(クラビ)など。作品の主な収蔵先に、ニューヨーク近代美術館、南オーストラリア州立美術館、金沢21世紀美術館、北九州市立美術館など。

AKI INOMATA

Photo: 朝岡英輔

ウメッシュ・P・K

バローダ(ヴァドーダラー)在住のインド人アーティスト。
人間の周囲にある自然界をインスピレーションに、すでに失われてしまった人間と自然とをつなぐ回廊をテーマとした作品を制作している。その芸術活動を支えているのは、神話や表象の歴史、精神世界などに対する関心である。ウメッシュの作品に登場する緑豊かな風景は、インド最南部、豊かな生態系を誇る西ガーツ山脈とアラビア海沿岸部に挟まれた細長いケララ州で育った幼少期の体験がベースになっている。ウメッシュ自身の言葉によると、創作活動は瞑想的なものであり、絵画史上の様々なムーブメントや各地の絵画の伝統を参照しながら、絵画をその基礎的な構成要素──色の相互作用、線や形の遊び、二次元の平面にもたらされる空間感覚など──から理解しようとする試みなのだという。
ボース・クリシュナマチャリのキュレーションによる「Lokame Tharavadu」(世界はひとつの家族/コチ=ムジリス・ビエンナーレ財団の主催により2021年にアラップーザで開催)など、様々な展覧会やアート・フェスティバルに参加している。

Umesh P K/ウメッシュ・P・K
片桐功敦

1973年、大阪府生まれ。華道家、花道みささぎ流家元。
中学卒業後に米国留学、1994年帰国。1997年、家元を襲名。2005年、堺市で教室とギャラリーを兼ねた「主水書房」を開設、若手アーティストの発掘、展示や出版など多岐にわたって展開。東日本大震災後の福島を訪れ、原発周辺の地で再生への願いを伝える作品を製作、撮影した『SACRIFICE ―未来に捧ぐ、再生のいけばな』(青幻社)を2015年に上梓。
作品のスタイルは、小さな野草をいけたものから現代美術的なインスタレーション作品まで幅広く、いけばなが源流として持つアニミズム的な側面を掘り下げ、文化人類学的な観点から植物と人間の関係性を紐解くことを目指している。国内外での個展、ワークショップを中心に活動している。

Atsunobu Katagiri/片桐功敦
川内倫子

1972年、滋賀県生まれ。
2002年に『うたたね』『花火』で第27回木村伊兵衛写真賞受賞。2023年にソニーワールドフォトグラフィーアワードのOutstanding Contribution to Photography(特別功労賞)を受賞するなど、国際的にも高い評価を受け、国内外で数多くの展覧会を行う。
主な著作に『Illuminance』(2011年)、『あめつち』(2013年)、『Halo』(2017年)など。近刊に写真集『やまなみ』『橙が実るまで』(田尻久子との共著)がある。2022~2023年に東京オペラシティ アートギャラリーでと滋賀県立美術館で個展「川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり」を開催した。

Rinko Kawauchi/川内倫子
キムスージャ

1957年、韓国・大邱(テグ)生まれ。現在はソウル、ニューヨーク、パリを拠点として活動。コンセプチュアルなマルチメディア・アーティストとして国際的に高い評価を受けている。
サイトスペシフィックなインスタレーションを複合的に提示することによって創出されるその作品は、美意識や文化、政治、環境といった問題をテーマとしつつ、人間の条件に関する考察の場ともなっている。
近年の主な活動としては、2023年のフレデリクスベア美術館(デンマーク)での個展「Cisternerne」や、2022年のメス大聖堂(フランス)のステンドグラス作品の永久設置、シドニー(オーストラリア)のニューサウスウェールズ州立美術館(AGNSW)による大型インスタレーション作品の収蔵などが挙げられる。また、「ドクメンタ14」(ドイツ、カッセル)、ヴェネツィア・ビエンナーレ(イタリア)、サンパウロ・ビエンナーレ(ブラジル)など、国際展にも多数参加出品している。

Kimsooja/キムスージャ

Photo: Giannis Vastardis

Courtesy of EMST, Athens, Greece and Kimsooja Studio

森山未來

1984年、兵庫県生まれ。
5歳から様々なジャンルのダンスを学び、15歳で本格的に舞台デビュー。2013年には文化庁文化交流使として、イスラエルに1年間滞在、Inbal Pinto&Avshalom Pollak Dance Companyを拠点にヨーロッパ諸国にて活動。「関係値から立ち上がる身体的表現」を求めて、領域横断的に国内外で活動を展開している。
俳優として、これまでに日本の映画賞を多数受賞。ダンサーとして、第10回日本ダンスフォーラム賞受賞。東京2020オリンピック開会式では鎮魂の舞を踊った。
近年の活動として、パフォーマンス「FORMULA」(2022 企画構成・演出・出演)、ソロパフォーマンス『Osmosis』(2023 金沢21世紀美術館 企画構成・演出・出演)、企画展「なむはむだはむ展『かいき!はいせつとし』」(2023 太田市美術館・ 図書館/神戸・バイソンギャラリー)、アートイベント「KOBE Re: Public Art Project」(2023 キュレーション)、映画「シン・仮面ライダー」(2023)、『山女』 (2023)など。2022年4月より神戸市にArtist in Residence KOBE(AiRK)を設立し、運営に携わる。ポスト舞踏派。

Mirai Moriyama/森山未來

©Takeshi Miyamoto

太田三郎

1950年、山形県生まれ。岡山県津山市在住。
71年国立鶴岡工業高等専門学校機械工学科卒業。80年より発表をはじめる。採集した種子を和紙に封入して、切手に仕立てた作品《SEED PROJECT》や、戦争後の様々な問題を取り上げた〈POST WAR〉シリーズなど郵便切手を用いた作品を作り続ける。近年の主な展覧会に、「太田三郎ー此処にいます」(岡山県立美術館、2019)、「MOTコレクション Jounals 日々、記す vol.2」(東京都現代美術館、2021)、太田三郎展:人と災いとのありよう」(BBプラザ美術館、2022)、など。主な受賞歴に、平成30年度地域文化功労者文部科学大臣表彰(2018)、第73回岡山県文化賞(2021)など。作品は東京国立近代美術館、東京都現代美術館、国立ドレスデン版画素描館(ドイツ)、ソウル国立現代美術館(韓国)など、国内外の美術館に収蔵されている。

Saburo Ota/太田三郎

Photo: 柴田れいこ

スミッタ・G・S

ケララ州コーリコードのマラバール地方(インド)出身。
独学のアーティストで、幼少時代に周囲にあふれていた自然のメロディーの記憶に影響を受け、動物たちや自然の緻密な美に焦点を当てた作品を制作している。スミッタの作品に描かれる人物像は脇役にすぎないことが多かったが、2010年代になってそのスタイルに変化が起こる。ケララ州で発生したニパウイルス感染症の流行を取り上げるなど、社会的なテーマが織り込まれ、人間の脆弱さと予測不可能な動物の世界とを対比させた作品が生み出されるようになった。新型コロナウイルス感染症によるロックダウンも大きな変化をもたらし、自宅に籠っての制作の中で、幸福感に満ちた宇宙の創造に取り組むようになった。動物たちの世界を描いた初期の作品と異なり、コロナ以降の作品には人間の姿が多く描かれるようになり、そこにはマラバール地方の伝統芸能や儀式、それらと自然との関係性も取り入れられている。
スミッタの作品はボース・クリシュナマチャリのキュレーションによる2021年の展覧会「Lokame Tharavadu」(世界はひとつの家族)に選出された。この展覧会がスミッタのアーティストとしてのキャリアの大きな転換点となり、インド国内外の様々な芸術施設やギャラリーがスミッタの作品を評価し、購入するようになる。

Smitha G S/スミッタ・G・S
妹島和世

1956年、茨城県生まれ。建築家。
1987年妹島和世建築設計事務所設立。1995年西沢立衛とともにSANAAを設立。2010年第12回ベネチアビエンナーレ国際建築展の総合ディレクターを務める。日本建築学会賞*、ベネチアビエンナーレ国際建築展金獅子賞*、プリツカー賞、芸術文化勲章オフィシエ、紫綬褒章などを受賞。主な建築作品として、金沢21世紀美術館*(金沢市)、Rolexラーニングセンター*(ローザンヌ・スイス)、ルーヴル・ランス*(ランス・フランス)などがある。
*はSANAAとして。

Kazuyo Sejima/

©SANAA

立石従寛

1986年、アメリカ合衆国シカゴ生まれ。現代アーティスト。
仮想と現実、自然と人工など、相対する境界の分解と合成をテーマに制作を行う。主な作品に、浜辺に浜辺を積層させる「Beach on Beach」、霧に向かって私的モノローグを公共放送システムに乗せて発する「To The Fog」、森の中に鑑賞空間を持ち込む「In(to)stallation」など。また、音楽や映画、パフォーミングアーツ、フードプロダクトなど、無領域的に活動する。英国の現代アート賞「New Contemporaries 2021」入選。英国Royal College of Art芸術修士号修了。

Jukan Tateisi/立石従寛

©Jukan Tateisi

リクリット・ティラヴァニ

1961年、ブエノスアイレス(アルゼンチン)生まれのタイ人アーティスト。
旧来の展覧会形式を否定し、料理や食事、読書といった日常的な行為の共有を通した社会的交流を提示する活動で知られている。その作品は、芸術品の優位性を拒絶する環境を創出し、モノの利用価値や、単純な行為と共同体内の相互扶助を通じて人々を互いに結びつけることに焦点を当てるとともに、労働や技巧にまつわる既成概念の打破を試みる。現在はコロンビア大学芸術学部の教授を務め、アーティストや美術史家、キュレーターが参加するコレクティブ・プロジェクト「Utopia Station(ユートピア・ステーション)」の創設メンバーでもある。チェンマイ(タイ)近郊に拠点を置く環境教育プロジェクト「The Land Foundation(ザ・ランド・ファウンデーション)」の設立にも協力した。

Rirkrit Tiravanija/リクリット・ティラヴァニ

Photo:Pauline Assathinay

上田義彦

1957年、兵庫県生まれ。写真家。
多摩美術大学グラフィックデザイン学科教授。東京ADC賞、ニューヨークADC、日本写真家協会作家賞など、国内外の様々な賞を受賞。2011年にGallery916を主宰。
代表作に『Quinault』,『at Home』,『Materia』,『A Life with Camera』,『FOREST 印象と記憶 1989-2017』,『68TH STREET』,『林檎の木』,『Māter』,『いつでも夢を』(赤々舎 2023)などがある。また2021年公開の映画『椿の庭』は大きな反響を呼び、映画監督としての仕事も注目されている。

Yoshihiko Ueda/上田義彦

Photo: Yoshiko Kojima

アシム・ワキフ

1978年、ハイデラバード(インド)生まれ。デリー在住。
デリーの都市計画建築学校で学び、映画やテレビ番組のアートディレクターとして働いた後、独立系の映像作品やドキュメンタリーの制作に従事。現在はアーティストとして自らの作品制作活動に取り組んでいる。
近年は建築、アート、デザインにまたがる領域横断的なプロジェクトを展開しているが、その背景には現代の都市設計や公共空間の占有/介入/利用にまつわる政策への強い意識がある。プロジェクトの一部は、社会の下層に追いやられた人々の隠れた活動空間として機能する廃墟を舞台としている。
ワキフの作品には、生態学や人類学に対する関心もしばしば織り込まれている。特に水、廃棄物、そして建築に関わる地域固有の生態系管理システムについて、ワキフは広範な研究を行ってきた。その作品の多くは、制作に手作業を伴い、多大な労力を要するように意図的に仕向けられている一方で、完成した作品そのものは一過性で、やがて崩壊することを前提としているものさえもある。彫刻からサイトスペシフィックなインスタレーション、映像、写真まで幅広く制作し、最近では伝統的な手法と新たなテクノロジーを融合させた、大規模でインタラクティブなインスタレーションも手掛けている。

Asim Waqif/アシム・ワキフ

Photo: Richa Sahai

ジャコモ・ザガネッリ

1983年、イタリア生まれ。フィレンツェとベルリンを拠点に活動。
地域コミュニティを対象とした芸術文化プロジェクトのアーティスト、キュレーター、および活動家。土地、環境、景観を通じて解釈される空間の概念の社会的及び公共的な側面をリサーチする。2010年には、空き地が提供する可能性について市民と行政の意識を高めるため、放棄された遺産をテーマにした先駆的な研究プロジェクト「La Mappa dell'Abbandono:見捨てられた場所の地図」を立ち上げた。 2015年以来、台湾と日本で継続的に活動している。
近年の主な活動に、個展「Superficially」(2018 MOCA 台北) 、「Grand Tourismo」(2018・2019 フィレンツェ ウフィツィ美術館)がある。また、瀬戸内国際芸術祭(2019 日本)、タイランド・ビエンナーレ(2021 タイ)に参加した。

Giacomo Zaganelli/ジャコモ・ザガネッリ

Photo: Silvia Piantini

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